昨日新苗穂駅が開業し、80年以上に渡って活躍してきた旧駅舎が役目を終えました。その苗穂駅を先日シリーズでご紹介しましたが、こちらも忘れてはなりません。
札幌市交通局では現在路面電車の整備や車庫として使っている電車事業所の建て替えを予定しています。 電車事業所、電車車両センターとも呼ぶようですが、現在の建物が建てられて今年でちょうど50年。苗穂駅ほどではありませんが、半世紀札幌市電を支え続けています。 札幌市電が今年100周年で電車事業所が50年、いろいろ節目の年なわけですね。
この建物が近々取り壊しになり、建て替えられるとのことで、長らく親しんだ建物を記録してこようと先日赴いてみました。
まずは正面から。建物自体はさほど建てられた当時から変わっていないようで、古い写真を見てもほぼ同じような状態ですが、車庫前が30年ほど前までは舗装ではなく砂利敷きだったようです。 駐車スペースの確保などが目的だったのでしょうけど、砂利敷きの方が鉄道らしく、また本線では見られない砂利敷きの上にいる路面電車というのを見ることができたので、ちょっとレア感があったのではないでしょうか。
余談ですが、チョロっとホンダ初代インサイトが写り込んでいますが、職員さんでなかなか渋いクルマに乗ってらっしゃる方がいるようですね。
続いて裏手です。
こちらの方がスッキリ建物が見られます。右側は工場ブースとなりますが、新しい建物ではこの工場ブースをガラス越しで見学できるエリアが設けられるとか。 ここで出来ない車体更新などの作業はJR北海道のグループ会社である札幌交通機械へ持って行って行っています。そもそも札幌交通機械の前身である苗穂工業製の車両もいくつかあり、札幌の市電にJR北海道(国鉄)も関係しているというのはなかなか興味深いものがあります。
車庫エリア前では車両が2両はみ出していました。手前は8512号、そして奥は札幌市電最古参の221号です。 59年製造の220形は鉄北線廃止の際に221、222号を残して全廃していますのでかなり貴重な車両となっています。 なお同じ59年製造の230型は鉄北線廃止の際8両すべて廃車となっていますので、220型の2両は奇跡的に生き残った車両と言えるでしょうね。 ただ221、222ともにラッピングになっているのが少々残念な所。出来れば札幌市電最古参の車両はオリジナルのカラーであってほしいものです。一方でラッピングのため車体更新が行われず、パンタもシングルアーム化されずにZ型で残っているとも言えるんですけどね。
ここはピットエリアのようです。入庫した車両は本線から渡り線を通ってこの中を通過して裏手に回り車庫へと入って行きます。貸切電車が運行になる場合、電車事業所で休憩を取る場合がありますが、その際は乗客を乗せまたままここを通過することになります。
さて最後にこちら
先ほどの裏手で見かけたM101です。車庫の裏手に潜んでいました。 最近では本線で姿をあまり見かけませんが、運用しているんでしょうか。廃車になった車両がない中、A1200形、そして1100形と増備になっていますので、M101の出番はあまりなく予備車になっているのでしょうね。 元親子電車のこのM101ですが、最古参っぽい感じがするものの、250形と同じ61年製ということで旧式の車両では一番新しいんですよね。
古いスタイルを今に残すこの車両は札幌市電で連接車が必要なほど市民の足として大活躍していた時代の証ですので、ぜひ動態で残してほしいものだなと思うばかりです。
過去にはA120形に置き換えられるとか、330形が3300形になったように別物になるような更新を受けるとの話が出ていましたが、今のところそれらをはねのけて予備車ながらもこうして現存し続けています。 ただ1100形が今後増備されゆくことになればいよいよ最古参の220形とともに危ういかもしれませんね。
ただすごいな〜と思うのは、近々建て替えになるという電車事業所がどの旧型車両よりも新しいという点。普通は車庫や工場が古くて車両は更新を繰り返しているので新しいというスタイルですが、札幌市電では現在の建物が建った時から逆で、建て替えになるとさらに車両との年齢差が広がることになる大逆転現象が起こることになるわけですね。
ヨーロッパではえらく古い、第一次世界大戦前の車両なども平然と現役を貫いていたりしますから、札幌市電もノンステップなど新しい車両もいいですが、レトロで売るという方法もありなのではないかと思うんですよね。 全国的に見ても丸みを帯びたヨーロピアンスタイルの車両は珍しいわけですし、経年を味方につけて売り込むという方法もありなのではないかと思うんですよね。 もっと言えば、ヨーロピアンスタイルの車両が似合う景観づくりというのもあっていいのではないかとも思いますし。
ところで電車事業所が古いということで建て替えになるのであれば、地下鉄の南車両基地辺りも電車事業所とさほど年数が変わりませんから建て替えということになってしまうのでは? でもそのうちどうするのでしょうね。車両基地も老朽化して手に負えなくなる時代が来ると思うのですが、全部撤去して建て替えるというのも難しそうですし。
ちなみに電車事業所には久々に行きましたが、周りを囲んでいたブロック塀が全部なくなっており、変わりに網で囲ってありました。大阪の地震で明らかになった危険なブロック塀、電車事業所も危険なブロック塀の施設に該当してしまったようですね。
耐震が耐震がと言いますが、先の震災も乗りきってるような・・・。 |
|