札幌市営地下鉄にはいくつか知る人ぞ知る事業用の車両というものが存在しています。札幌市交通局全体で見ても今や数少ない事業用の車両、かつては市電に貨車や散水車などが存在していましたが、今はササラ電車ぐらいがせいぜい。 そんな数少ない事業用の車両の1つに工作車というものが存在しています。その工作車が先日ひっそりと最後を迎えていました。
これが今回最後を迎えていた工作車。地下鉄東西線東車両基地で長らく活躍してきたものです。 この前の週に確認した時には解体作業中でしたが、この写真を撮影した時には既に作業は終わっていて搬出待ちになっていました。
こちらが現役当時のもの。 この画像は以前車両基地見学会の際車内から撮ったもの。車両基地内では基地本体というより本体外の各線へ軌道が分岐して行っている部分の一番端、安全側線のようなところに留め置かれていました。
ではこの工作車は一体何に使うものなのかと言えば、JRで言えばモーターカーとか小型の機関車的な役割を担っていました。例えば地下鉄では定期的にトンネル内の清掃作業を行っているようなんですね。埃などが地下水が混じるとヘドロのようになるらしいのですが、それを手作業で洗い流したりかき出したりする作業があるようなのです。その際かき出したヘドロを最終的にバキュームで吸い取るんですが、そのバキュームには動力がありません。なのでそのバキュームを牽引する際にこの工作車を使っていたようなんです。 他にも資材運搬や作業員の移動などに使っているトロッコ的なものを牽引したりもしていたようです。 こうした作業は地下鉄の営業時間外に行われるものですから、一般人が目にすることはまずありません。せいぜい南北線の地上区間で見ることができるかどうかでしょうか。 まさに知る人ぞ知る車両なわけです。その車両が今回こうして廃車になったということは、逆に言えば新車が入ったとも言えるのでしょうね。
工作車の運転台部分です。 JRのスイッチャーや入れ替え用の機関車同様横向きなんですね。 運転台は完全に撤去しないで搬出となるようです。 赤いレバーはマスコンのようです。
さてこの車両、存在は知っていましたが、一体動力はなんなのか?と思っていたんです。パンタグラフがある様子はありませんので、直接架線から電源を得ているわけではなさそうです。となると蓄電池?と思っていたんですが、この解体された廃品を見てピンときました。
廃品の山の中に燃料タンクがあるではありませんか。その横にも気動車などに見られる部品が。 この工作車は気動車だったんです。地下で活躍する車両なのに気動車?と思うんですが、まあたま〜に出てくるだけの車両ですし、1両での運用ですから排気ガスがさほど問題になるレベルではないのでしょう。新千歳空港駅にも気動車が入線してたぐらいですし。 こうなると是非稼働中のシーンを見てみたくなるものです。 一応交通局の公式ツイッターに走行シーンが出てはいるんですが、エンジン音までは聞こえないんですよね。
足回りなどもありました。なるほど、気動車なのでハブの奥にはデファレーションですか。こうして見ると通常の地下鉄車両と違って鉄道の車両というよりこれはもう大型車と同じです。 ハブの形状も地下鉄の車両と違ってダブルタイヤで使うことを想定した構造ではないようです。見た目はほんとに大型車の前輪の同じです。 他にも地下鉄には車両基地内で使うディーゼル機関車が存在していますが、こちらもきっと同じような足回りなのでしょうね。
さほど本線の走行する機会というのはない車両でしょうから、走行距離もそんなに行っていなかったでしょうし、完全屋内での使用ですから痛みもさほどではなかったでしょうから、まだまだ使えたのでは?と思うのですが、そこには大人の事情もありそうなものの、こうして知る人ぞ知る車両がひっそりと最後の時を迎えていました。 どうやら最近では札幌交通機械がこうした車両の製造を手掛けているとか。札幌交通機械ってJR北海道の関連企業ですから、結局札幌の地下鉄も市電もJRが陰で支えているということになるのでしょうね。市電や地下鉄車両の整備も行っていますし。 それどころか函館の市電まで札幌までわざわざ運んで車両の整備を行っているようです。まさに札幌交通機械は北海道の鉄道にとって不可欠な会社なわけですね。
なお言うまでもないですが、これらの写真は敷地外からの撮影です。 |
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