前回札幌市営地下鉄南北線の5000系が今年で30年目という記事を掲載しましたが、そこで思い出したのがまだ昨年撮影して来て掲載していないものがあったということ。 今日はそちらのご紹介です。 今日ご紹介するのは札幌市営地下鉄の第四次試験車「すずかけ」です。 札幌市営地下鉄の試験車は本来なら何かしらの形式が与えられそうなものですが、このすずかけの他はるにれという名称が与えられたり、何もなかったりと形式がありません。あえて言えば第〇次試験車という感じでしょうか。
このすずかけは第四次試験車で最終試験などを行う目的で導入されたため、ほぼ完成型でこの後製造になるのが本番用である1000系です。中身はほぼ1000系、2000系と同じようですが、このすずかけが初めての電車となりました。地下鉄の試験車なのに最終試験車で初めて電車になったの?となりますが、それまでの試験車はガソリンエンジンだったり、廃バスを改造した試験車だったので電車ではなかったんですね。また初めて両頭型、そして1両ではなく2両編成の車両となりました。 この前の車両であるはるにれは一応両方に顔はありますが、運転台は片方のみでした。 恐らく札苗にあった円形というか、正方形のようなループ型の試験線で走っていたためなのでしょう。そしてその後600m強の試験線が札苗試験場に追加になりますが、その新しい試験線こそすずかけのための試験線だったのでしょうね。第三軌条や転鉄機などもあったようなので、車両だけでなく設備関係の試験も目的とした試験線だったと思われます。
さてそのすずかけです。
中身はもう1000系2000系と同等になっていますが、見た目はまさに試験車という感じで第3次試験車のはるにれより旅客車両っぽくなく、無蓋貨車のような車両です。最終試験などを目的としていたのでこの程度でよかったんでしょうね。まさに必要最低限の装備しかないとう車両です。 カラーもサビ止め塗装そのままというようなオレンジが目を引きます。 交通資料館リニューアルに際して再塗装されたようで、足回りなどもきれいになっていました。 これを見れば札幌方式の足回りが一発で理解できますね。
なお本番用の車両はスリックタイヤを履いていますが、こちらは外の試験線を走るためかちゃんとトレッドパターンが刻まれたタイヤを走行輪だけでなく案内輪にも履かせています。
ちなみにですが、交通資料館のリニューアル前は全部が砂利敷きでしたが、現在は車両の周りだけが砂利であとは舗装されています。花壇の中にいるような感じですね。 いつも思うんですがこの車両どうやってここに入れたんでしょう。連結部は連接台車でつながれた半永久連結ですが、ここに入れる際一旦バラすというややこしい作業をしたんでしょうかね?奥の方では高架の橋脚をくぐっていますし結構めんどくさくて大変な作業をしたんじゃないかと思うんですよね。そして二度と出せなくなってしまったんじゃないかとも。
さてこの撮影に際して一脚を持参しました。目的は内部を撮るため。コンデジではやったことがあったんですが、ミラーレスに乗り換えてからはやったことがなかったので撮り直しということでやってみました。
まずは運転室から。 一脚にカメラをつけて足を延ばして足を手で持ち、破れた窓から撮影したんですが、コンデジより小回りが利かなくて正直撮りづらかったです。 肝心の運転台がよく見えませんがブレーキ弁は札幌の地下鉄というより鉄道車両そのものというものが採用されているのが分かりますね。
コンデジだと前の方にある開いている通風孔からカメラを差し込んで前からも撮れたんですが、ミラーレスはレンズの分があるので隙間から差し入れることが出来ず撮影できませんでした。 フロントガラスにデフロスターがついている辺り外を走っていた車両という感じですね。
次は荷台というか車内というかですが、機器類だけが置かれていて座席というものが一切ありません。 恐らく試験中はここに重りを載せたりして満員の状態などを再現したりもしていたんでしょうね。実際の車両でも未だに新車が入ると土嚢を錘として載せたりして試験をやっているみたいですし。 運転室のドアにある窓がなくなっています。
反対を見たものです。反対側の運転室もドアの窓がなくなっていますね。 以前見た時はゴチャゴチャとゴミのようなものが積まれていたんですが、きれいに掃除されていました。 無蓋貨車のような感じですが、実は外側の囲いは後付けのようで、元々はフレームだけだったようなんですね。 なので試験中の写真などを見ると中にはフレームむき出しで走っているという姿のものもあるので、外側の囲いは後天的な変化なのでしょう。
次はちょっと気になるものがあったのでそちらです。
タイヤが2本載っていました。 廃タイヤ?と思ったんですが、どうやらスペアタイヤのようです。 ホイールナットの数がクルマのものと比べると明らかに多いですし、どうやら車両に固定されているようなんですね。他にもう1本別な場所に載っているのを見つけましたが、これは恐らく試験中からずっと50年以上載っているものなのでしょう。
気になるものその2です。
主電動機なんですが、点検口でしょうか、蓋がなくなっていました。他の主電動機でも蓋がなくなっているものがあったんですが、盗難にあったんでしょうかね。だとするとこんなもの盗んでも価値があまりあるとは思えないんですが・・・。主電動機の蓋ですからね。ちょっと残念な光景です。 こういうことがあるから車内の公開がどんどんなくなってしまうんでしょうねぇ・・・。
最後はこちらですが、連接台車の部分です。台車というべきなのかちょっと迷いますが、動かないようにガッチリ止められています。これじゃ動くに動けませんが、そもそも砂利敷きなのでまず動くことはないとは思うんですけどね。
こうしてこの後1000系2000系が生み出されるわけですが、ほぼ実際の車両というこのすずかけは1度も本線を走ることがなかったものの、1両でガソリンエンジンで走っていた実際の車両とは遠い存在の第三次試験車のはるにれの方が実は本線経験があるんですよね。と言っても営業線ではなくしばらくの間南車両基地内で保管されていたため、車両基地への入線はあるという形となりますけどね。 それでもどこかの倉庫や高架下ではなく車両基地内で保管していたという辺り、はるにれに対する当時の思い入れが伺える気がします。
すずかけも試験期間中に姿に変化がみられていましたが、はるにれの方も写真や映像によってはダブルタイヤだったり、シングルタイヤだったり、シングルタイヤなんだけど外側のホイールだけを装備した奇妙な状態だったりという姿が見受けられますので、ちょいちょい見た目に変化があったんでしょうね。 なお現在は本番用のスリックタイヤを装備して展示されていますが、これも試験中とは違っています。外の試験線でスリックタイヤは雨の日などは走行できませんからね。 ホイールもタイヤも試験中のものとは違うもののようですから、現在のものは交通資料館に展示する前に装備したものだと思われます。 |
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